往生要集　三巻｡ 源信げんしん和か尚しょうの著｡ 源信和尚四十四歳の時の作で､ ひろく諸経論釈の中から往生極楽に関する要文を集め､ 同信行者の指南の書としたものである｡
　全体は(1)厭えん離り穢土えど､ (2)欣ごん求ぐ浄じょう土ど､ (3)極楽ごくらく証しょう拠こ､ (4)正しょう修しゅ念仏ねんぶつ､ (5)助念じょねん方法ほうほう､ (6)別べつ時じ念仏ねんぶつ､ (7)念仏ねんぶつ利り益やく､ (8)念仏ねんぶつ証しょう拠こ､ (9)往おう生じょう諸しょ行ぎょう､ (10)問答もんどう料りょう簡けんという整然とした組織で構成されている｡ このうち(1)(2)(3)は本書の導入部にあたるもので､ (1)六道ろくどう輪りん廻ねの穢土を厭うべきこと､ (2)極楽を欣ねがうべきことを説き､ (3)その極楽が十方浄土や兜と率そつ天てんよりもすぐれていることを指摘する｡ (4)以下(9)までは往生の行ぎょう業ごうについて明かした部分である｡ (4)は念仏を実践する方法を述べた本書の中心部分であり､ (5)はその念仏を助じょ成じょうする方法を七項目に分けて示したものである｡ (6)は特定の日時を限って修める尋じん常じょうの別行と､ 死に臨んでの念仏である臨終の行儀について説いたもの､ (7)は念仏の利益を七種あげたものである｡ (8)は念仏によって往生を得る証拠として経論から十文を示したもの､ (9)は念仏以外の諸行について述べたものである｡ 最後の(10)は全体を結ぶもので､ 上の所論に関連する諸問題を問答形式によって解釈している｡
　本書は､ 日本における最初の本格的な浄土教の教義書であり､ 撰述後まもないころよりひろく流布して､ 思想面はもとより､ 文学・芸術など広範囲に大きな影響を与えた｡ 七祖聖教の一｡