高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆本 (信証本) は、 表紙中央に 「唯信鈔」 との外題がある。 左下の袖書は、 摩損と剥落により十分に判読し得ないが、 同寺所蔵 ¬唯信鈔文意¼ 康元二年正月二十七日親鸞聖人真筆本の表紙袖書と同じ 「釈覚然」 であると考えられている。 旧表紙は、 本紙共紙で中央に 「唯信鈔」 との外題があり、 左下に 「釈信証」、 右下に 「釈覚然」 と袖書が墨書される。 この外題と 「釈信証」 は本文と同時にしたためられた筆と認められ、 宗祖が自ら書写して信証に与えられたことを示している。 これに対して 「釈覚然」 の袖書は異時筆であり、 信証に与えた後、 更に覚然の手に渡る際に書き加えられたことが窺い知られる。 本文には句点や顕発点が朱筆によって加えられている。 奥書には寛喜二年の書写とあるが、 筆風は明らかに老年期の手になり、 ¬唯信鈔文意¼ (正月二十七日本) と寸法や料紙、 更に筆も一致することから、 信証本は正月二十七日本と共に康元二年に書写されたものと考えられている。 従って寛喜二年は、 宗祖書写の底本になった原本の奥書とみることができる。
 体裁は半葉五行、 一行十六字内外である。