真宗大谷派蔵康元二年宗祖真筆本は、 表紙中央に 「一念多念文意」 との外題があり、 袖書は抹消されている。 内題および尾題はなく、 本文には分別書方による朱筆の区切り点が付されている。 奥書には 「康元二歳丁巳二月十七日/愚禿親鸞 八十五歳 書之」 とあるが、 解説で触れられているように、 建長八 (1256) 年の御消息にすでに本書の名が見えることから、 本書の成立はそれ以前であると考えられる。 また、 宗祖の ¬一念多念文意¼ の書写について、 奥書に建長七 (1255) 年四月との書写奥書を残すものが最も古いことから、 本書の制作は建長七年四月から、 建長五年八月の間であろうとの指摘があるが、 ¬一念多念分別事¼ の書写年時がもう少し遡る可能性もあり、 本書の正確な制作年時は明らかではない。
体裁は半葉五行、 一行十三字内外である。 なお、 本書は大正十一 (1922) 年侍薫寮によって、 大谷派本願寺宝庫より発見されたものであり、 昭和三十二 (1957) 年にその影印版が出版頒布されている。