思渓版 (宋版) ¬大蔵経¼ は、 靖康元 (1126) 年、 密州観察使の王永従がその一族だけで開版したため、 版経中に題記や施財刊記が少ないのが特徴である。 湖州の思渓円覚禅院で開版されたことから、 思渓版といい、 円覚蔵とも呼ばれる。 思渓版以前の宋版 (東禅寺版・開元寺版) は音義を別帖としていたが、 思渓版では各巻末に音義を付す様式になり、 それは思渓版以降も踏襲されている。 思渓版は、 紹興二 (1132) 年に円覚禅院が荒廃したために五百四十函を開版して中断したが、 南宋代に再び同寺で五十一函が補刻されている。 日本においては、 増上寺・長谷寺・岩屋寺・喜多院・唐招提寺・興福寺などにまとまって所蔵されている。 なお、 日本で最初の版本大蔵経である天海版は主にこの思渓版を底本としてつくられた。