本書の題号にある 「御消息」 とは、 親鸞聖人が関東から京都に帰られて遷化されるまでに、 関東各地の門弟に与えられた手紙のことである。 四十三通あって、 そのほとんどは ¬御消息集¼、 ¬血脈文集¼ や従覚上人が編集された ¬末灯鈔¼ などに収録されているが、 近年公表された 「真蹟消息」 や 「古写消息」 なども含まれている。 その内容は門弟の質問に対する返事や聖人の身辺のことであり、 門弟からの懇志に対するお礼に添えて書かれたものなどもある。
これらの消息を通して、 関東の門弟たちの間で、 教義的にどのようなことが問題になっていたかを推測することができる。 「誓願名号同一」 や 「如来とひとし」 ということについての説明、 また造悪無碍の異義に対する厳しい批判などがそれである。 さらに念仏停止の訴訟や慈信房 (善鸞) の義絶に関するものがいくつかみられることも注意すべきである。 その他、 「自然法爾章」 のような短編の法語も収録されている。
全体としては、 晩年の聖人の信心の領解がうかがわれるとともに、 指導者としての聖人の態度や門弟の信仰態度などを知ることができ、 初期の真宗教団の動静をうかがうに欠かせぬものである。