勝福寺蔵本は、 兵庫県火打の勝福寺に伝わったもので、 現在龍谷大学図書館に蔵される。 第十三観までを 「本」、 上品上生以下を 「末」 として、 二帖になっている。 古伝によれば、 本派第五代宗主綽如上人 (1350-1393) の筆といわれているが、 それを明らかにする所徴はない。 しかし、 その奥書によって、 南北朝の末、 綽如上人の時代の書写であることが知られる。
 「末」 は 「本」 よりも文字がやや小さく、 両帖は別筆であるといわれる。
 「本」 の奥書には、 「至徳二歳 十一月二十八日 奉書写之訖」、 「末」 の奥書には、 「康応元年 八月三日 以聖人御点秘書写之訖」 とある。 「末」 は宗祖の加点本によって延書したというのであるが、 それと一具の 「本」 を欠失していることは惜しまれる。
 宗祖には若い頃に書かれた ¬観経註¼ があるが、 それには返点や送り仮名は付されておらず、 この延書本の 「末」 は、 宗祖の観経加点がどのようであったかを窺う上で貴重なものとされている。