専修寺蔵顕智上人書写本は、 上巻の巻末に諸本と同様に 「建長七歳乙卯八月二十七日書之/愚禿親鸞 八十三歳」 との根本奥書があり、 次いで 「永仁元年癸巳十月六日/書写之」 との書写奥書がある。 すなわちこの書写本は、 宗祖が示寂されて二十一年後、 顕智上人六十八歳の時のものであり、 現存する中では最古の書写本と位置づけられるものである。 この書写本の特徴は、 ¬愚禿鈔¼ が相伝された中では唯一の巻子装本であること、 下巻が二分されていること、 更には下巻に奥書が存在していないことなどが挙げられる。 その下巻の構成は、 「愚禿鈔下」 との首題があり、 次いで 「又復就観仏有二種」 から巻が改まっており 「愚禿鈔下末」 との首題がある。 また、 各巻共に首題の下に 「高田派専修寺」 の墨印がある。
 体裁は、 下巻が二分されているため巻子装本で三巻仕立であり、 一行十四字内外である。