本書は、 一般には ¬三さん経ぎょう往おう生じょう文類もんるい¼ といわれている。 「三経往生」 とは大だい経きょう往生、 観かん経ぎょう往生、 阿弥陀あみだ経きょう往生のことである。
 大経往生とは、 ¬仏説ぶっせつ無む量りょう寿じゅ経きょう (大経)¼ にもとづいて阿弥陀如来の第十八願の法を信じ、 現生に正定しょうじょう聚じゅに住して真実しんじつ報ほう土どの往生をとげることであり、 これを難なん思議じぎ往生という。 ここでは、 第十八願・第十一願の願文や成じょう就じゅ文もんによってそれが示され、 さらに ¬往おう生じょう論ろん註ちゅう¼ の文で助顕じょけんされている。 なお本書には広略の二本があるが、 本聖典依用の広本では、 この大経往生の部分で第十七願の願文や成就文等が加えられている。
 観経往生とは、 ¬仏説ぶっせつ観かん無む量りょう寿じゅ経きょう (観経)¼ 顕説けんぜつの教えにもとづいて、 自力心をもって諸善万行を修し、 方便化土けどに往生することであり、 これを双樹そうじゅ林りん下げ往生という。 ここでは、 第十じゅう九く願の願文と成就文、 第二十八願の成就文、 ¬悲華ひけ経きょう¼ の文によってそれが示され、 さらに ¬往おう生じょう要よう集しゅう¼ の文によって報土と化土の違いが顕されている。
 阿弥陀経往生とは、 ¬仏説ぶっせつ阿弥陀あみだ経きょう (小経しょうきょう)』顕説の教えにもとづいて、 自力の称名しょうみょうを行じ、 七宝の牢獄といわれる疑ぎ城じょう胎たい宮ぐに往生することであり、 これを難なん思じ往生という。 ここでは、 第二十願の願文・成就文によってそれが示され、 ¬観かん経ぎょう疏しょ¼ や ¬述じゅつ文賛もんさん¼ の文で助顕されている。
 このように本書は、 いわゆる三願・三経・三往生という真宗教義の基本を簡潔に述べたものである。