蓮如上人書写本は、 旧表紙の左上に 「入出二門偈頌」 とあり、 右下に 「釈蓮如」 との袖書がある。 また巻末に 「入出二門偈頌 七十三行 愚禿釈親鸞作」 とあるが年紀は見られない。 左訓が多く、 そのほとんどは真仏上人書写本にはないものである。 本文においては、 付加された内容がないだけでなく、 脱落していた 「不断煩悩得涅槃 則斯安楽自然徳」 を後に挿入している点などが見られる。 また、 真仏上人書写本との文言の相違があり、 例を挙げると、 「安養」 が 「安楽」、 「大集経」 が 「月蔵経」、 「造悪者」 が 「造悪業」、 「獲摂取」 が 「獲得信」 となっている点などである。 これらの相違は、 必ずしも誤写と断じることができないことから、 蓮如上人書写本は宗祖自身の手による一本を伝えるものと考えられている。
 体裁は半葉五行、 一行二句である。