本派本願寺蔵蓮如上人書写本は、 その筆跡から第八代蓮如上人の青年期の書写であるとされている。 また、 そのことは大谷大学蔵室町時代書写本の奥書に、 「右此一帖 蓮如上人于時永享十一年七月廿九日以真筆或対門弟授与之御本 令書写之者也」 とあり、 永享十一 (1439) 年、 蓮如上人が二十五歳の時に本書を書写したことが伝えられている。 蓮如上人書写本には、 定専上人書写本に比べて、 大幅な文章の欠落と文言の相違とが見られる。 文章の欠落については、 四箇所見られ、 一例を挙げれば定専上人書写本では 「ひとへに仏の御ちからにてすくひたまへば、 なにのうたがひか…」 とある部分が、 蓮如上人書写本では 「ひとへになにのうたがひか…」 とあり、 十五字分の欠落が見られる。 次に、 文言の相違について一例を挙げれば、 定専上人書写本では、 「摂取決定なればまた来迎決定なり」 とある部分が、 蓮如上人書写本では 「摂取決定なるがゆへに往生決定なり」 と、 「来迎」 と 「往生」 との相違が見られる。 また、 定専上人書写本では 「本願かぎりあるゆへに」 とある部分が、 蓮如上人書写本では 「本願力なるゆへに」 となるなどの相違が見られる。
体裁は半葉五行、 一行十五字内外である。