来迎院蔵本は、 奥書に 「康和元年十二月一日申時於大原報身房書写功畢/同二日移点了 執筆僧薬源/願依此書写功自他共生極楽国矣」 とあり、 康和元 (1099) 年に執筆僧の薬源によって書写されたもので、 外題に 「讃阿弥陀仏偈 良忍之」 とあることから、 良忍上人が所持していたことがわかる。 本書は、 日本に現存する最古の書写本であり、 偈頌の完備したものとして実に貴重である。 内題に 「□□弥陀仏偈論」 とあることから、 敦煌本と同じく ¬略論安楽浄土義¼ と本来一具のものであったが、 現在は別装の巻子本となっている。 内容は、 礼讃文が付加された系統と比べると、 本文は第六行に二句、 第九行に一句の欠落、 及び第十九行に一句の付加が認められる。 また一句七言を基本とするが、 八言、 六言などもあり、 一句の文字数にはやや乱れがある。
 体裁は巻子装、 一紙二十八行、 一句七字を基本として一行四句に統一され、 本文には訓点が付されている。