本書は､ 天親てんじん (世せ親しん) 菩ぼ薩さつの ¬浄じょう土ど論ろん¼ に示された入出二門と､ 曇鸞どんらん大だい師し・道どう綽しゃく禅ぜん師じ・善導ぜんどう大師の釈義を讚えられた偈げ頌じゅである｡
　初めに ¬浄土論¼ の ｢願がん生しょう偈げ｣ によって､ 天親菩薩が真実の教によって阿弥陀仏に帰き命みょうされていることを讚え､ さらに曇鸞大師の解釈にもとづいて､ ｢願生偈｣ がまったく阿弥陀仏の本願力を讚えられたものと理解されている｡
　すなわち礼拝らいはい・讚嘆さんだん・作さ願がん・観察かんざつ・回え向こうの五ご念門ねんもんと､ それに応じて得る近門ごんもん・大だい会え衆門しゅもん・宅門たくもん・屋門おくもん (入の四門)・園林おんりん遊戯ゆげ地じ門もん (出の第五門) の五功ごく徳門どくもん (入出二門) について､ 元来は行者が修める行とその功徳として論じられていたものを､ 親鸞しんらん聖しょう人にんはすべて法蔵ほうぞう菩薩 (阿弥陀仏) の修められたところとみなされている｡ こうした解釈は､ 曇鸞大師が ¬浄土論¼ の文にしたがって五念門と五功徳門を論じつつ､ 最後にそのすべてが阿弥陀仏の本願力によることを明かし､ 他力の深義を示している意をうけられたものである｡
　さらに道綽禅師の聖浄しょうじょう二に門もんの釈義を讚え､ 善導大師が念仏成仏の法門を真宗といい､ 一いち乗じょう海かいと呼び､ 信心の行者を称讚されたことを述べられている｡