底本は高田派専修寺に蔵せられる。 表紙には中央に 「大般涅槃経要文」、 左下には湮滅しているが 「釈顕智」 との袖書があり、 更に右側には 「墨付六拾六枚 貫文四年辰六月十八日ニ改ル」 との貼紙がある。 次いで旧表紙一には同じく中央に 「大般涅槃経要文」、 左下に 「釈顕智」 との袖書きがあり、 旧表紙二には 「業報差別経文 大般涅槃経要文 愚禿親鸞」 と書かれ、 見返には 「一苦 二酢 三甘 四辛 五鹹 六淡」 とある。
さて内容の大部分は、 宗祖真筆であり、 北本系統の ¬涅槃経¼ が抄出されたものでるが、 最後部にいたって ¬業報差別経¼ と ¬金光明経¼ とが引用され、 再度 ¬涅槃経¼ が引用された後、 また ¬金光明経¼ が引用されるという構成をとっている。 この ¬業報差別経¼ の次にある ¬金光明経¼ 以下は別筆とされる。 また本書の所々に貼紙が付されているが、 これは後世のものである。
宗祖が ¬涅槃経¼ を敬重されたことはよく知られているが、 本要文に引用されたものは、 本典引用のものとは異なる部分が多く含まれ、 また ¬見聞集¼ 「涅槃経」 では南本系統を書写しているのとは対照的であるなど、 注目される点も多い。