龍谷大学蔵室町時代刊本は、 刊記に 「永元四年四月八日刻雕畢願主大/法師実眼」 とあるが、 「永元」 という年号は存在せず、 「承元」 の誤刻とされる。 当本は承元四 (1210) 年版の一本を版下とした承元覆刻版とされ、 版面や装丁等から室町時代の刊行とされる。 ただし、 古い写本や刊本との異同が多く、 当本がどこまで承元四年版の内容を示すものか疑問視する説もある。 しかし当本は後に諸刊本の底本とされ、 本書の刊行史においては重要な位置を占めている。 巻末には遣宋消息及び返報が付刻されている。 また、 全帖に墨書による訓点が認められる。
 体裁は粘葉装六帖、 半葉六行、 一行十五字である。 なお、 承元四年版の覆刻版は本書を含めて龍谷大学に四本があるほか、 宮内庁書陵部、 大東急記念文庫などにも所蔵されている。 その版式には、 室町時代のものと江戸時代初期のものとの両種のあることが指摘されている。