この一幅は正和23年 (1948) 年に宝庫より発見されたものである。 奥書に 「二尊大悲本懐 開山聖人真跡也 釈従如 (花押)」 とあることから、 「二尊大悲本懐」 とも称せられる。
 内容は、 中央部に釈迦大悲の文と弥陀大悲の文とが上・下に大書され、 それぞれの下部に小字で註釈が施されている。 更に天部には源信僧都 ¬往生要集¼ と覚運和尚 ¬念仏法号¼ 取意の文、 地部には ¬無量寿経¼ 発起序の文が記され、 一幅を成している。
 また注目されるのは、 対校本の本派本願寺蔵本の、 蓮如上人による裏書であり、 そこには 「右此本尊者覚如上人之手跡也」 と記してある。 このことから本要文はかつて本尊として依用されていたことが分かるのであり、 讃銘が存在するという体裁の類似等から、 名号本尊との関連を指摘する研究もある。 なお本要文には、 本聖典で底本・対校本としたものの他に、 石川県本覚寺蔵蓮如上人筆、 高田派専修寺蔵顕智上人筆の二本が写本として伝わっている。