興正寺蔵本は、 同寺において宗祖真筆本と伝える一本であり、 「康元二年三月二日書写之/愚禿親鸞 八十五歳」 の奥書がある。 旧表紙二中央の 「三経往生」 と、 左下の袖書 「俊直」 とが宗祖の自筆とされ、 同表紙中央右の 「浄土三経往生文類」 と、 右下の袖書 「平俊直」 とは本文と同筆とみられる。 この袖書に見える 「平俊直」 とは、 ¬明月記¼ によって、 他国からの来朝誘導や仏寺僧尼の事務を司る玄番寮管であった人物であろうといわれている。
 体裁は半葉五行、 一行十三字内外である。