親鸞聖人血脈文集
本集には親鸞聖人の御消息五通が収められている。 このうち、 四通が性信宛のもので、 一通が慶西宛である。 慶西は性信 (-1275) を中心とした横曾根門徒の一人と推定されているので、 本集は性信系統の横曾根門徒によって編集されたものと考えられている。 ¬親鸞聖人血脈文集¼という題号がつけられ、 第四通と第五通の間に、 法然上人・親鸞聖人の流罪記録と、 法然上人・親鸞聖人・性信と伝わった本尊の銘文のことなどが記されていることなどから、 法然上人・親鸞聖人・性信の三代伝持の血脈を強調するために編集されたものといわれている。 したがって本集の成立年時も、 三代伝持を強調しなければならなくなった背景となる、 いわゆる唯善事件が解決した延慶二年以降と推定する説が有力である。 一方、 本集は親鸞聖人の晩年に性信が編集したもので、 血脈相承を主張したものではないとする説もある。
大谷大学蔵専琳寺賢心再影写本は、 現在、 所在不明となっている富山県専琳寺蔵賢心書写本の影写本を再度影写したもので、 第五通がない。 賢心書写本の原本は室町時代末期のものとみられ、 表紙には 「親鸞聖人血脈文集」 という外題のほか 「釈賢心」 の袖書がある。
大谷大学恵空書写本は、 異本と校合を行っているが、 御消息の本文には錯乱がある。