顕智上人自筆本は、 包袋の中央に 「聞書」、 右下に 「内 壹枚聖人御筆」、 同じく中央下に 「顕智聖人御筆」、 左下には 「慶性御筆」 (抹消) とある。 この慶性なる人物は、 顕智聖人書写の高田派専修寺蔵 ¬選択本願念仏集¼ の表紙袖書にその名が見られる。 この点から慶性は顕智聖人から書写聖教を受け取り所持していたと推測され、 その門弟とみられている。 当本の現状の構成は、 表紙・挿入紙一 (別筆)・¬抄出¼ (十四丁)・¬往生礼讃¼ の文 (別筆)・本文・奥書・本文・挿入紙二 (別筆)・裏表紙となっている。 まず、 表紙中央に 「聞書」 とあり、 表紙見返には 「元文三四月」 の貼紙がある。 見返に続く挿入紙一では、 三経往生などに関する内容が本文とは紙質の異なる料紙に記されている。 解説で触れられているように ¬抄出¼ は錯簡のために入り込んだもので、 実質的な巻頭には 「往生礼讃」 の一文が本文と同質の料紙に別筆にて記され、 本文冒頭と巻尾には 「高田専修寺」 の黒印がある。 本文は整理されており、 一丁の行数を揃えた上で改行などが施されている。 また、 奥書の後に本文が十丁ほど続けられている。 巻末の挿入紙二では、 やはり紙質の異なる料紙に 「草本云/建長七歳乙卯五月廿七日/愚禿親鸞 八十三歳/書写之」 「貞和四 卯月上旬 /書写之/執筆性」 とともに別筆で記されている。 宗祖の奥書が何を示すかは明らかでないが、 その筆は慶性ではないかとも言われる。
 体裁は半葉六行、 一行十七字内外である。