本派本願寺蔵鎌倉時代刊本 (宗祖加点本) は、 上下両巻を具える現存最古の刊本である。 刊記がなく、 その開版年時は不明であるが、 下巻末尾に、 「建長八歳七月廿五日 愚禿親鸞 八十四歳 加点了」 と宗祖による加点年時の記述があることや、 本完本の字体などから、 寛元・建長の頃の開版と考えられる。 本書はかつて奈良で刊行された春日版であるといわれたが、 現在では、 その当時の京都における浄土教徒によって開版されたものとみなされている。
 体裁は半葉六行、 一行十七字である。 両巻にわたって宗祖の筆で朱書および墨書による訓点が施され、 下巻末尾には、 迦才の ¬浄土論¼ に示される曇鸞伝の一節が書写されている。 なお、 普賢晃壽氏所蔵の ¬往生論註¼ (下巻) は、 料紙は異なるが、 当本と同版と見られる。