仏説観無量寿経延書
本書は、 ¬観経¼ に宗祖が加点した本を元にした延書であり、 二巻に分けられたうちの末巻のみが伝わる。
宗祖による ¬観経¼ の書写本には ¬観無量寿経註¼ (観経註) がある。 これにより宗祖所覧の経文が知られるが、 ¬観経註¼ には返点・送り仮名などの訓点は付されておらず、 ¬観経¼ の宗祖加点を伝えるものとして本書は重要である。 また、 ¬観経註¼ と本書の経文とには一致しない点が複数ある。 ¬観経註¼ と本書の経文とを比較すると、 内題の 「無量寿観経」 と 「観無量寿経」、 本文の 「蘇蜜」 と 「酥蜜」、 「心歓喜」 と 「心観喜」 など、 文言の相違がみられる。 これらのことから、 本書の元になった ¬観経¼ の経文は、 宗祖が ¬観経註¼ を書写する際に元になった ¬観経¼ の経文とは別系統のものと考えられる。
本書の奥書には、 「康応元年 己巳 八月三日 以聖人/御点秘書写之訖」 とあり、 その成立は康応元 (1389) 年であることがわかる。 また、 この奥書により、 当時は伝存していた宗祖の加点本によって本書が制作されたことが知られる。