覚如上人自筆本は、 上巻には 「康永三歳 孟夏上旬 此巻書写之畢/桑門宗昭 七十五 」、 下巻には 「康永三歳 九月十二日/相当亡父尊霊御月忌故/終写功畢/釈宗昭 七十五 /同年十月廿六日夜於灯下/付仮名訖」 との書写奥書を有す。 すなわち、 康永三 (1344) 年、 覚如上人が七十五歳の時に、 上巻を四月に、 下巻を九月の父覚恵上人の月忌にそれぞれ書写し、 さらに約一ヶ月後に仮名を付け終えたことが知られる。 この覚如上人の自筆本が、 本抄の最終的な定稿と考えられており、 覚如上人による改訂の最後に位置づけられる。 片仮名混り文が通例であった当時において、 平仮名混りの草書体で書かれている点は当本の特徴である。 また他本と比べて左訓が多く、 全体で百十一カ所あり、 上巻に乱丁が見られる。
 体裁は、 半葉五行、 一行十字内外である。