鷺森別院本は、 ¬本願寺通紀¼ にも見られるように古来より鷺森別院に襲蔵されてきたもので、 五帖本開版の嚆矢とされる。 現存するものは、 当本の他に大谷大学本や福井県仰明寺本などが知られる。 当本は版の傷や摩滅が著しく、 特に五帖目は入墨箇所が散見され、 大谷大学本と比べて後摺とみられるが、 五帖を通して同一版の善本であることが知られる。 なお、 大谷大学本は花押の形状が五帖目のみ異なり、 また異版が雑っていて三帖目は第十三通目を欠くことなどから、 単帖本との関係もあるとされる。
体裁は半葉七行、 一行十八字内外で、 各巻の末尾に 「釈証如(花押)」 と刻される。