常楽寺蔵存覚上人書写本は、 本文・右左訓・註記ともに存覚上人の筆蹟であるが、 表紙に記される 「浄土論」 は後世の筆とされる。 当本は、 二種類の読み方を左右に示す特徴が見られるが、 この方法は存覚上人書写の ¬愚禿鈔¼ とも共通している。 また、 当本に付される註記のほとんどは、 ¬往生論註¼ を参照して付されたものと考えられる。 なお、 当本は、 長行の離菩提障の途中 「行故得入」 までの十八紙のみが現存し、 その中、 観察体相の 「住持荘厳」 から離菩提障の 「生心遠離」 までの二丁が最後に配置されるといった、 欠落や乱丁が見られる。
体裁は粘葉装一帖、 半葉六行、 一行十七字内外である。