浄興寺蔵本は、 本末の二巻から成る。 本巻の表紙には、 左上に 「顕名鈔 本」 との題箋があり、 末巻の表紙には左上に 「顕名鈔 末」 との題箋がある。 また、 本巻の末尾には 「応永一年 甲辰 十二月廿二日終書写/之微功則于性順授与之畢」 「信州水内郡太田庄長沼浄興寺住侶/常楽台御真筆也仍不可他人相/続殊可奉貴敬 云々」 との奥書がある。 末巻の末尾には、 解説で触れられている 「本云/依明光大徳誂記之畢…」 との奥書、 並びに 「此両帖雖為秘蔵之書性順頻致/望之間且表信心之懇篤所令/授与也于時応永二年 乙巳 正月十三日/終書写之微功畢」 との奥書がある。 これらの奥書より、 当本は浄興寺第七世性順が応永三十一 (1424) 年に上洛し、 本願寺第六代宗主巧如上人より授けられたものであることが知られる。 この当時、 聖教を門弟に授与するという役割は本願寺に限られており、 本願寺の宗主又はそれに準じる者が認めた 「真筆」 をもって授与していたことが知られる。 なお、 当本は 「常楽台御真筆也」 と記されているが、 同寺に所蔵される ¬浄土見聞集¼・¬決智鈔¼ の書写者である空覚の字体に一致することから空覚の書写本であろうと目されている。 空覚は、 巧如上人の次男であり本願寺第七代宗主存如上人の弟にあたる。
体裁は半葉六行、 一行十八字内外である。