本書は、 宿老や兄弟たちから聞いた蓮如上人の言行を実悟が記した二百九十一箇条からなる言行録である。 ¬蓮如上人仰条々連々聞書¼ の奥書に 「右此条々者、 蓮如上人御時之儀、 宿老衆兄弟中各御物語儀等、 先年注置処、 享禄乱皆失畢。 然而其内一帖計、 聊或人持来令見之間、 則書加之」 とあるところによれば、 実悟は以前よりまとめていた蓮如上人の言行録を享禄の錯乱によって一度は失ったが、 後に残存していた一部分を入手し、 これをもとに ¬仰条々¼ を編纂したとある。 そして、 享禄の錯乱によって失われた言行録は、 実は別に書写伝来されていて、 それが本書であると推定されている。 すなわち、 元禄二 (1689) 年に書写された ¬蓮如上人御自言¼ との表題をもつ言行録 (三百二十三箇条) のうち、 天正十二 (1584) 年に了勝が収録した百三十五箇条と、 これとは別の百十四箇条を合わせた二百四十九箇条とが、 失われた言行録に相当すると考えられており、 これを ¬実悟日記¼ と称している。 そして、 後に見出されたその原本ともいうべき言行録が本書であるとされる。 本書が後の言行録に与えた影響は大きく、 三百十四箇条を収録する ¬蓮如上人御一代聞書¼ のうち二百四十六箇条は本書を元にしていると考えられている。