慈観上人書写本は、 十巻十冊から成る。 解説で触れられている延文五年の年紀を持つ 「作者」 の奥書に続いて、 本鈔の書写には厳しい制約がある旨が記されており、 当時の聖教書写の状況を窺い知ることができる。 また、 貞治二 (1363) 年の年紀を持つ奥書からは、 慈観上人に本鈔が伝授されていることがわかる。 さらに明徳二 (1392) 年の年紀を持つ奥書には、 本願寺第五代宗主綽如上人が慈観上人から当本を譲られたことが記されている。
 体裁は半葉六行、 一行十七字内外である。