本派本願寺蔵本は、 現存最古の巻子装の書写本で、 各巻の表紙左上に、 巻数及び 「慕帰絵」 の題号が書かれている。 当時の著名な絵師と能書家によって絵図と詞書が顕された絢爛豪華な絵巻物で、 特に、 その精緻な絵図は、 芸術的価値が高く、 当時の風俗を知る上でも貴重な資料とされている。 第一・七巻については、 第一巻の奥書に 「慕帰絵之事不可出当寺内之/処有不慮之議数年為 将軍/家之御物雖然文明十三年十二月/四日以飛鳥井中納言入道 宋世 依申/入事之子細今度所被返下也但/此内第一第七之巻為紛失之間/同十四年仲冬上旬之比令書加/之者也尤希代之事歟可秘可秘」 「詞黄門入道 宋世/画師掃部助藤原久信」 とある。 当本は元来、 本願寺から門外不出とされていた。 しかし、 足利義政の要請により将軍家の御物となっていたようで、 文明十三 (1481) 年十二月四日に飛鳥井雅康の仲介により返却されたが、 第一・七巻が紛失のため返ってこなかった。 そこで翌文明十四 (1482) 年十一月上旬の頃に、 絵を藤原久信が補写し、 詞書を飛鳥井雅康が補筆したとされている。