高野山宝壽院蔵鎌倉時代写本は、 上巻のみが現存する。 奥書など書写年時を示すものはないが、 書体や料紙などから鎌倉時代初期の書写と推定される。 本文は誤脱が比較的少なく、 善本である。 また、 大阪府金剛寺蔵保延四年書写本 (下巻) が共に半葉七行、 一行十七字であることや、 尾題が共に 「無量寿経論」 系統であることなどから、 当本と金剛寺本とを同系統と推測する説もある。 本文は墨書に加え、 朱書による右左訓・声点・異本情報などの書き込みも見られる。 当本の流伝については、 奥書に 「永正第十 伝与信順房」 とあり、 表紙右下に 「信順房」 とあることから、 永正十 (1513) 年に信順へ伝与されたことが知られる。
体裁は半葉七行、 一行十七字内外である。