本書は、 「五帖御文章」 の編纂にあたって八十五通が選定された中から、 ¬夏御文章¼ 四通と共にそれぞれ別行したものといわれ、 「御俗姓御文」 「御俗の御文」 「御俗姓御文章」 などと呼ばれる。 蓮如上人が六十三歳の時、 親鸞聖人の御正忌に際して示された教語といわれ、 親鸞聖人の俗姓から事蹟、 門徒の心得などが説かれたものである。
 本書の内容は五段に分かれ、 第一段には、 親鸞聖人は藤原氏で、 皇太后宮の大進有範の子であるという宗祖の俗姓が説かれる。 第二段は、 親鸞聖人は阿弥陀如来の化身、 あるいは曇鸞大師の再誕であるといい、 九歳で慈鎮和尚の門で出家し天台宗の碩学となり、 二十九歳の時源空 (法然) 聖人の門下に入り高弟となって、 凡夫直入の真心をあらわして、 門末を浄土に往生するよう勧められたことが記されている。 第三段は、 聖人ご遷化の御正忌に報謝の志を運ばないものを誡められ、 第四段は、 報恩謝徳をなすことこそ報恩講の眼目であることを示され、 最後の第五段では、 一念帰命の真実信心を勧められている。