毫摂寺蔵本は、 兵庫県小浜の毫摂寺に伝わる乗専書写本で、 大経の上巻と下巻はそれぞれ本末に分かれ四帖とされ、 小経は一帖になっている。
大経の四帖各帖の表紙には、 左上部に各々 「無量寿経上本」 「無量寿経上末」 「無量寿経下本」 「無量寿経下末」 の外題があり、 右下部に 「釈空善」 の袖書がある。 四帖共にその末尾に、 「貞和三歳 丁亥 林鐘仲旬候以聖人御点秘本写于仮名 令授与之訖 願主 空善」 という奥書がある。 小経は表紙に 「四紙阿弥陀経」 の外題と 「釈乗専」 の袖書とがあり、 別筆で 「出雲路乗専聖人御筆」 とある。
このことにより、 大経と小経は一具として書写されたものではなく、 大経は空善が所持し、 小経は乗専自身が所持していたものと考えられる。 そして書写した人の名は示されていないが、 その筆跡から、 大経小経共に乗専の書写であるとされている。 大経の宗祖加点本は現存しないため、 聖人の加点本によったと伝える本書は貴重なものと考えられる。 現在本書は、 龍谷大学図書館に寄託されている。