御伝鈔 本書は、 ¬本願ほんがん寺じ聖しょう人にん親鸞しんらん伝でん絵ね¼、 ¬善信ぜんしん聖しょう人にん親鸞しんらん伝でん絵ね¼ あるいは単に ¬親鸞伝絵¼ とも称されている。
 もと宗祖親鸞しんらん聖しょう人にんの曽ひ孫まごにあたる第三代宗主覚如かくにょ上しょう人にんが、 聖人の遺徳を讃仰するために、 その生涯の行蹟を数段にまとめて記述された詞ことば書がきと、 各段の詞書に相応する図絵からなる絵巻物として成立したが、 写伝される過程でその図絵と詞書とが別々に分れて流布するようになった。 そしてこの図絵の方を 「御ご絵え伝でん」、 詞書のみを抄出したものを ¬御ご伝でん鈔しょう¼ と呼ぶようになったものである。
 本書の初稿本であろうとされるものは、 親鸞聖人三十三回忌の翌年、 永仁えいにん三年 (1295) 覚如上人二十六歳の時に著されたものとされているが、 覚如上人は晩年に至るまでそれに増訂を施して諸方に写伝されており、 その過程で生じた出没、 異同、 構成形態の変化などが諸本に見られている。
 現行のものは上・下二巻、 計十五段からなっている。 上巻八段にはそれぞれ、 (1)出しゅっ家け学道がくどう、 (2)吉水きっすい入にゅう室しつ、 (3)六角ろっかく夢む想そう、 (4)蓮れん位い夢む想そう、 (5)選せん択じゃく付ふ属ぞく、 (6)信しん行ぎょう両りょう座ざ、 (7)信心しんじん諍じょう論ろん、 (8)入にゅう西さい鑑察かんざつの記事が、 また下巻七段にはそれぞれ、 (1)師資しし遷せん謫ちゃく、 (2)稲いな田だ興法こうぼう、 (3)弁円べんねん済さい度ど、 (4)箱はこ根ね霊告れいこく、 (5)熊くま野の霊告れいこく、 (6)洛陽らくよう遷せん化げ、 (7)廟びょう堂どう創そう立りゅうの記事が掲載されている。