願得寺蔵実悟書写本は、 蓮如上人の第十男である実悟がいくつかの紙片に書写していたものを、 昭和三 (1928) 年に巻子装に改められたものである。 その奥書には、 「右蓮如上人御詠歌於所々御作候共不/及撰出書写也如此雖書集近来/錯乱悉失畢仍此一両年漸写/聚者也/天正八年霜月 日 八十九歳兼俊 (花押)/同詠歌あらば聞付次第書そへべき」 とあることから、 実悟が苦心の末、 最晩年に書写・編集したものであることがわかる。 収録数は蓮如上人の和歌集の中で最多の二百十一首である。 多くの和歌には実悟による端書が付されており、 年紀の判明しているものは実悟によって年代順に配列され、 年紀不明の歌については内容が類似する歌ごとにまとめられている。 また本書写本には、 年代や内容が大きく変わる歌の前に区切りとして丸印が付されているが、 年紀不明の和歌については内容の区切りとは思われない箇所に丸印が付されている場合もある。 今回は本書写本を実見し得なかったことから、 同書写本を底本としている ¬真宗聖教全書¼ 第五巻によって翻刻した。