本書は、 奥書に ¬改邪鈔¼ と名づけられた由来が述べられているように、 親鸞聖人の門弟のなかに、 師伝でない異義を主張し、 聖人の教えをみだす者があらわれたため、 邪義を破し、 正義を顕すために、 述作されたものである。 第三代宗主覚如上人は三代伝持の血脈 (法然-親鸞-如信) を主張し、 自分がその血脈の正統を受け継ぐものであることを示し、 当時の教団内の邪義二十箇条を挙げて批判し、 もって大谷本願寺を中心として真宗教団を統一しようとされたのである。 二十箇条の異義は大別すると大体三点に分けられる。 その一は、 寺院観である。 第二十条には大谷本願寺を無視する門弟達の傾向を誡め、 大谷本願寺に教団全体を統一しようとする覚如上人の意図が示されている。 その二は、 門徒の行儀についての批判である。 ことさら遁世のかたちを装い、 裳無衣や黒袈裟を用いる時宗の風儀をまねる者、 わざとなまった声で念仏する者など、 門徒の風儀・言語について批判している。 さらには同行の与奪等の行為の禁止を説示し、 対同行の態度について述べられている。 その三は、 安心論上の問題であって、 仏光寺系の名帳・絵系図を異義とし、 知識帰命の異義を破斥し、 安心と起行についての分別をなし、 起行を正因とすることを否定して、 信心正因の立場を主張されているのである。 本書は当時の真宗教団における異義を是正した書であって、 ¬口伝鈔¼ とともに覚如上人の代表的著作の一つに数えられる。