同本異訳
後漢時代から宋代にかけて、 インドや西域から中国へ陸続と将来された仏典は、 約先年にわたり次々と翻訳された。 その中には、 同一の原典でありながら、 伝承過程で互いに字句が異なったり、 内容が増減されたものがあり、 また、 中国においてもそれぞれが異なる訳者によって重ねて翻訳されたものもある。 これらの経典類を 「同本異訳」 あるいは 「異訳経典」 という。 ª無量寿経º や ª阿弥陀経º なども同じ状況にある。 この二経については、 源空 (法然) 聖人が 「浄土三部経」 として康僧鎧訳 ¬無量寿経¼、 畺良耶舎訳 ¬観無量寿経¼、 鳩摩羅什訳 ¬阿弥陀経¼ を正依とされ、 宗祖もその意志を承けられている。 この三経の内、 ¬無量寿経¼ ¬阿弥陀経¼ には異訳経典が存在する。 一般的にこれら異訳経典はそれぞれ 「異訳大経」 「異訳小経」 と呼ばれ、 それぞれの文言や内容の相違が指摘されている。 宗祖はこれらの相違に着目し、 ¬教行信証¼ において、 ¬荘厳経¼ 以外の異訳大経を引用し、 浄土真宗の教義を明らかにされた。 なお、 近代以降、 異訳経典の文言の相違や成立に関する研究が進み、 「無量寿経」 「阿弥陀経」 それぞれの同一経典群を示す場合には、 ª無量寿経º ª阿弥陀経º と表記することが学会の通念となっている。