仏説無量寿経延書
本書は、 正依 ¬大経¼ に宗祖が加点した本を元にした延書である。
宗祖による ¬大経¼ の書写本は今日に伝わらず、 また本書の元になった加点本も現存していない。 そのような中で、 宗祖が ¬大経¼ に加点した内容を伝える本書は重要である。 本書の特徴としては、 たとえば、 本願成就文については 「あらゆる衆生、 その名号をききて信心歓喜し、 乃至一念せん。 至心廻向したまへり」 と、 ¬教行信証¼ 「真文類」 や ¬浄土三経往生文類¼ と同様の訓点によって延書され、 阿弥陀仏から回向された信心であることを示す宗祖独自の訓みがみられる点が挙げられる。 また、 四十八願の願名は、 本書において各願冒頭右傍に註記されるが、 真仏上人書写の 「四十八誓願」 では、 上欄に註記され、 その位置は異なっている。 本書と 「四十八誓願」 との願名を比較すると、 本書には四十八願の一々に付されるのに対して、 「四十八誓願」 では十九の願文に付されるのみで、 文言にも 「不更悪趣」 と 「不更悪道」 などの相違がある。
本書の奥書には、 「貞和三歳 己巳丁亥 林鐘仲旬候以聖人御点秘/本写于仮名令授与之訖/願主空善」 とあり、 その成立は貞和三 (1347) 年であることがわかる。 また、 この奥書により 「聖人御点秘本」、 すなわち、 当時は伝存していた宗祖の加点本によって本書が制作されたことが知られる。