安楽集 二巻。 道綽禅師の著。 諸経論の文を援引して ¬観無量寿経¼ の要義を示し、 安楽浄土の往生を勧めた書。 全体は、 上下両巻、 十二大門 (上巻三大門、 下巻九大門) の組織よりなっている。
その内容を見ると、 第一大門では、 教法が時代と根機にかなっていなければ効がないことを指摘し、 現今の人々は称名念仏によって往生を願うべきであると主張して、 ¬観無量寿経¼ の宗旨や阿弥陀仏の身土などについて説示する。 第二大門では、 菩提心が願生心に結帰することを示し、 あわせて別時意説など種々の論義に答える。 第三大門では、 龍樹菩薩の難易二道判、 曇鸞大師の自力他力判を受けて、 聖道・浄土二門の判釈をくだし、 末法の時代には浄土の一門こそ通入すべき道であることを力説する。 第四大門以下は、 上の三大門を補説したもので、 第四、 第五大門は主として往生の因行について、 第六大門から第十一大門までは浄土の意義や往生者のありさまなどについて述べ、 最期の第十二大門は全体を結ぶものとして疑謗を誡め信順を勧めている。
本書は、 往生浄土の教えが大乗仏教の基本原理の上に立脚するものであることを種々の観点から巧みに論証しており、 浄土門の理論的基礎を築きあげたものとして大きな思想的意義を有している。 七祖聖教の一。