大阪府願得寺蔵蓮能尼書写本 (蓮能尼本) は、 蓮如上人の五人目の室である蓮能尼が書写したものである。 蓮能尼による奥書はないが、 蓮如上人の第十男である実悟によって奥書が記されている。 その奥書には 「此一帖御文 十通 亡母蓮能尼禅尼真翰也/自兼照律師令伝領所持者也深可/頂戴而已/永正十六年九月三日/前少僧都兼俊 (花押)/釈実悟」 とあり、 この内容から本書写本が間違いなく蓮能尼によって書写されたものであることがわかる。 また、 右の奥書によると、 本書写本は当初、 蓮能尼から蓮如上人の第九男である実賢 (兼照) へ伝えられており、 これを永正十六 (1519) 年九月三日に、 兄の実賢から実悟が譲り受けたものであることが知られる。 加えて、 書写者の蓮能尼は永正十五 (1518) 年九月三日に示寂していることから、 本書写本が実賢から実悟へ譲り渡されたのは、 蓮能尼の一周忌の日であったことも窺われる。
 本書写本には全十通が収められており、 体裁は半葉八行、 一行二十字内外である。