富山県行徳寺蔵道宗書写本 (道宗本) は、 篤信の門徒として知られる越中赤尾の道宗によって書写されたものである。 全二帖からなっており、 一帖目の奥書には 「此一帖十二通ノ御文ハ以御筆直□御ウツシ候御本/ニテ慥写申候也何モ御本ノ如ク也/道宗」 とあり、 また一帖目の各通の終わりにも 「以御筆御写候御本ニテ又ウツシ申候也」 等とある。 このことから、 道宗が書写する以前に、 蓮如上人自筆の 「御文章」 を書写した本が存在し、 それをもとに道宗が書写を行ったことがわかる。 また、 右の奥書では収録通数が十二通となっているが、 現在、 一帖目には八通しか収められていない。 これについては、 一帖目から二通が抜き出されて掛軸に別表装されたものが存在しているが、 残りの二通については所在が不明となっている。 次に二帖目の奥書には 「此一帖十一通ノ御文ハ九通ハ御筆ヲモテ直ニウツシ申候也/一通ハ上様ノ以御筆直ニうつし申候一通ハ御筆ヲモテスキウツシ/ノ御本/ヲモテ直ニうつし申候也何モ加減ナク候クダリモ/カナヅカヒモ御本ノゴトク也 道宗」 とあり、 また二帖目の各通の終わりには 「以御筆直ニうつし申候也」 「以御筆スキウツシ御本ニテウツシ候」 とある。 これらの記述からも、 蓮如上人自筆本の他に、 先に透き写しによって制作された書写本があり、 道宗はそれをもとに書写を行ったことが知られる。 また、 蓮如上人の自筆 「御文章」 から道宗が書写したものの終わりには、 「正本ハ…」 というように、 自筆 「御文章」 の所在を示す文言が記されており、 道宗が各地に赴いて自筆 「御文章」 の書写を行ったことがわかる。 このように各帖の奥書等から、 本書写本よりも先に自筆 「御文章」 の書写本が制作されていたことが知られるが、 このことは蓮崇書写本と同様に、 かなり早い時期から 「御文章」 の収集・編纂が行われていたことを示すものである。
本書写本は掛軸装の二通を含めて全二十一通が収められ、 体裁は半葉九行、 一行十九字内外である。