親鸞 (1173-1262) 浄土真宗の開祖｡ 日野有範の長子｡ ¬御伝鈔¼ によれば､ 九歳の時に慈鎮和尚 (慈円) について出家し､ 範宴と名のられたという｡ 以後二十年間､ 比叡山で修学されたが､ その間には常行三昧堂の堂僧をつとめておられたとみられている｡ 建仁元年 (1201) 二十九歳の時､ 六角堂に参篭し､ 九十五日の暁､ 聖徳太子の夢告をうけて､ 吉水に法然上人を訪ね､ その門弟となられた｡ 元久元年 (1204) 比叡山の圧力に対して法然上人が提出された ｢七箇条制誡｣ に､ ｢僧綽空｣ と署名されている｡ 翌元久二年 (1205) ¬選択本願念仏集¼ を付属されてこれを書写し､ 法然上人の真影を図画した｡ また夢告により､ 綽空の名を善信と改められたという｡ 建永二年 (承元元年・1207) 念仏弾圧によって､ 法然上人や同輩数名とともに罪せられ､ 越後 (現在の新潟県) に流された｡ 恵信尼公と結ばれたのはこの地であったともいわれる｡ 建暦元年 (1211) 赦免され､ 建保二年 (1214)､ 妻子とともに常陸 (現在の茨城県) に移住し､ 関東で伝道の生活をおくられた｡ 六十二､ 三歳の頃､ 京都に帰られたが､ その理由は明らかではない｡ 建長初年の頃から､ 関東の門弟中に法義理解の混乱が生じたため､ 息男慈信房善鸞を遣わされたが､ かえって異義を生じ､ 建長八年 (1256) 善鸞を義絶された｡ 弘長二年 (1262) 十一月二十八日､ 弟尋有の坊舎で､ 九十年の生涯を終えられた｡ なお弘長二年の十一月二十八日は､ 新暦では一月十六日になるので､ 没年を西暦一二六三年と表示する場合もある｡ その撰述は､ 主著 ¬顕浄土真実教行証文類 (教行信証)¼ をはじめとして､ ¬浄土文類聚鈔¼ ¬愚禿鈔¼ ¬入出二門偈¼ ¬浄土和讃¼ ¬高僧和讃¼ ¬正像末和讃¼ ¬三経往生文類¼ ¬尊号真像銘文¼ ¬一念多念証文 (一念多念文類)¼ ¬唯信鈔文意¼ など数多い｡