浄土論 一巻。 天親てんじん菩ぼ薩さつ造、 菩ぼ提だい流支るし訳。 つぶさには ¬無む量りょう寿じゅ経きょう優婆うば提舎だいしゃ願がん生しょう偈げ¼ といい、 略して ¬浄じょう土ど論ろん¼ とも ¬往おう生じょう論ろん¼ ともまた ¬論ろん¼ とも呼ばれる。
 本文は、 二十四行九十六句の偈げ頌じゅ (詩句) と、 三千字足らずの長じょう行ごう (散文) とからなっている。 その偈頌 (願生偈) の部分は、 最初に帰き敬きょう頌じゅがおかれ、 天親菩薩自身の阿弥陀仏への帰依と願生浄土の思念とが表白される。 ついで、 造論の意趣が示され、 つづけて、 安楽国土と阿弥陀仏およびその聖しょう衆じゅの三種の荘しょう厳ごん相そうが二十九種にわたって讃詠されている。 末尾には、 偈頌の結びとして、 あまねく衆しゅ生じょうとともに往生することを願う回え向こうの意が示されている。 つぎの長行は前の偈頌を解釈した部分で、 そこでは往生浄土の行としての五念門 (礼拝らいはい・讃嘆さんだん・作さ願がん・観察かんざつ・回向) が開示され、 その五念門の果徳としての五果門 (近門ごんもん・大だい会え衆しゅ門もん・宅門たくもん・屋門おくもん・園林おんりん遊戯ゆげ地じ門もん) が説かれている。
 本書は、 往生浄土の行を大だい乗じょう仏教の実践道として明確化したものであり、 本書の最初の註釈書である曇鸞どんらん大だい師しの ¬往おう生じょう論ろん註ちゅう¼ を通して、 後世の浄土教思想に多大な影響を与えた。 七しち祖そ聖教しょうぎょうの一。