12 他た力りき・本願ほんがん力りき回え向こう　他力とは､ 阿弥陀仏の本願力回向のはたらきをいう｡ 本願力とは､ 因いん位にの本願のとおりに完成された力用りきゆうのことである｡ その本願とは､ 十方じっぽうの衆しゅ生じょうをして阿弥陀仏の救いを信ぜしめ､ その名みょう号ごうを称えしめて､ 浄土に往生せしめようという願いであったから､ 本願力とは､ 衆生をして信しん行ぎょうせしめ往生成仏せしめているはたらきをいうのである｡ このように､ 衆生に南無阿弥陀仏を与えて救うことを､ 親鸞しんらん聖しょう人にんは本願力回向といわれたのである｡ 回向とは ｢回転して趣向すること｣ であるが､ これに自身の善根ぜんごんを転じて菩ぼ提だい (さとり) に向かう菩提回向 (自利) と､ 他の衆生に施して与えて救っていく衆生回向 (利他) と､ 真如しんにょにかなっていく実際回向とがある｡ いま本願力回向とは､ 本願に誓われたように､ 阿弥陀仏が自身の成就された仏徳のすべてを南無阿弥陀仏におさめて衆生に与えたもう利他回向のことである｡ ¬一いっ多た証しょう文もん¼ に､ ｢回向は､ 本願の名号をもつて十方の衆生にあたへたまふ御みのりなり｣ といわれたごとくである｡ 親鸞聖人は ｢教きょう巻かん｣ の初めに､ 本願力回向の相に､ 往相おうそう､ 還相げんそうの二種のあることを示された｡ 往相とは､ 衆生が浄土に往生していく因果のすがたであって､ 教を与え行信の因を与え証果を与えていくことである｡ 還相とは､ 証果を開いたものが大悲をおこして菩ぼ薩さつのすがたとなって､ 十方の衆生を救うためにこの世に還り来るすがたであるが､ それもまた阿弥陀仏の第二十二願によって与えられたすがたである｡