10 大だい行ぎょう・真実しんじつ行ぎょう　大行とは､ 第十七願に誓われた諸仏讃嘆さんだんの名みょう号ごうをいう｡ 大行の大には大､ 多､ 勝の三義がある｡ すなわち広大､ 多量､ 最勝の意味で､ 行の徳用とくゆうを表している｡ ｢行ぎょう巻かん｣ に大行と名づけられる理由を明かして､ ｢もろもろの善法ぜんぽうを摂し､ もろもろの徳本を具せり｣ といわれたのは無量の徳で多の義にあたり､ ｢極速円満す｣ は勝れた用徳ゆうとくで勝の義､ ｢真如しんにょ一実の功徳宝海なり｣ は広大無辺な真如にかなう性しょう徳とくで､ 大の義にあたるといえよう｡
　行とは､ 一般に教・行・証という場合の行は､ 梵語のチャリヤー (caryā) の漢訳で､ 菩ぼ提だい､ 涅ね槃はんに至るための行為を意味する｡ ¬唯信ゆいしん鈔しょう文もん意い¼ には ｢行｣ の字に左さ訓くんして ｢おこなふとまうすなり｣ といわれている｡
　このように大行とは､ 真如にかない､ 無量の徳をもち､ 衆しゅ生じょうをすみやかに涅槃に至らしめるすぐれた行ぎょう業ごう (おこない) のことである｡ それゆえ ｢真実行｣ ともいわれるのである｡
　｢行巻｣ の出しゅっ体たい出しゅつ願がんの釈に､ ｢大行とはすなはち無碍むげ光こう如来にょらいの名みなを称するなり｣ と行体を指定されている｡ これは ¬論ろん註ちゅう¼ (下) の起き観かん生しょう信しん章の名号破満の釈によられたもので､ 名みょう義ぎにかなわない自力の念仏に対して､ 無碍光如来の光こう明みょう智相にかない､ 名義と相応している如実行であることを顕すためである｡ その名義である光明智相とは､ 衆生の無む明みょうを破り､ 往生成仏の志願を満たす力用りきゆうをもつ名号であるということで､ この名号のもつ破闇満願の力用こそ衆生を涅槃に進趣せしめる行としての徳義である｡ ｢無碍光如来の名を称するなり｣ と行体を指して称名を大行であるといわれているが､ 称えたはたらきによって行となるのではなく､ 称えられている名号に大行としての徳をもち､ この名義にかなって称えているから称名また大行といわれる徳があると､ 能所のうじょ不二ふにの大行の義趣を示されたのが出体出願の釈である｡
　もともと､ 信心､ 称名といっても名号の活動相のほかになく､ 衆生は､ 称えているまま能称を忘れて無碍光如来の名義を聞き､ 本願招しょう喚かんの勅ちょく命めいを聞信もんしんしているのである｡ それを ｢称名即名号｣､ ｢信心即名号｣､ ｢称名即信心｣ といい､ このように信心､ 称名の全体が名号大行の活動相であるというのが ｢行巻｣ のあらわすところである｡ ｢信巻しんかん｣ は､ この法体ほったい大行が衆生の上にとどいて大信だいしんとなり､ 衆生の往生成仏の正しょう因いんとなっていくという機受の要義を顕すのであって､ 行と信は､ 法と機の関係にあるのである｡