◗548: 3 黒田の聖へつかはす御返事 第十六
◗548: 4 末代の衆生を往生極楽の機にあてゝみるに、行すくなしとてうたがふべからず、一念・十念にたりぬべし。
◗548: 5 罪人なりとてうたがふべからず。罪根ふかきをもきらはず。時くだれりとてうたがふべからず、法滅已後の衆生なを往生すべし、いはんやこのごろをや。
◗548: 7 わが身わろしとてうたがふべからず、自身はこれ煩悩具足せる凡夫なりといへり。
◗548: 8 十方に浄土おほけれども、西方をねがふは十悪・五逆の衆生もむまるゝゆへ也。
◗548: 9 諸仏の中に弥陀に帰したてまつるは、三念・五念にいたるまで、みづからきたりてむかへ給ふがゆへ也。
◗548:10 諸行の中に念仏をもちゐるは、かのほとけの本願なるがゆへ也。
◗548:11 いま弥陀の本願に乗じて往生してんには、願として成ぜずといふ事あるべからず。本願に乗ずる事は、たゞ信心のふかきによるべし。
◗548:13 うけがたき人身をうけて、あひがたき本願にあひて、おこしがたき道心をおこして、はなれがたき輪廻のさとりをはなれて、むまれがたき浄土に往生せん事は、よろこびがなかのよろこび也。
◗548:15 つみをば十悪・五逆のものなをむまると信じて、小罪をもおかさじとおもふべし。罪人なをむまる、いかにいはんや善人をや。
◗549: 1 行は一念・十念むなしからずと信じて、无間に修すべし。一念なをむまる、いかにいはんや多念をや。
◗549: 3 阿弥陀は、不取正覚の詞成就して現にかのくにゝましませば、さだめていのとおはらん時には来迎し給はんずらん。釈尊は、よきかなや、わがおしへにしたがひて、生死をはなれんとすと知見し給ふらん。六方諸仏は、よろこばしきかな、われらが証誠を信じて、不退の浄土に往生せんとすとよろこび給ふらんと。
◗549: 7 天にあふぎ地にふしてもよろこびつゝ、このたび弥陀の本願にあへる事を、行住坐臥にも報ずべし。かのほとけの恩徳を、たのみてもなをたのむべきは乃至十念の詞、信じてもなを信ずべきは必得往生の文なり。