1027:14 末代の衆生を往生極楽の機にあてゝみるに、行すくなしとてうたがふべからず、一念・十念たりぬべし。
1027:15 罪人なりとてうたがふべからず、罪根ふかきおもきらわずといへり。
1028: 1 時くだれりとてうたがふべからず、法滅已後の衆生なほ往生すべし、いはむや近来おや。
1028: 2 わが身わるしとてうたがふべからず、自身はこれ煩悩を具足せる凡夫なりといへり。
1028: 3 十方に浄土おほけれども、西方をねがふ十悪・五逆の衆生むまるゝがゆへなり。
1028: 4 諸仏の中に弥陀に帰したてまつるは、三念・五念にいたるまで、みづからきたりてむかへたまふがゆへに。
1028: 5 諸行の中に念仏をもちゐるは、かの仏の本願なるがゆへに。
1028: 6 いま弥陀の本願に乗じて往生しなむには、願として成ぜずといふ事あるべからず。本願に乗ずる事は、たゞ信心のふかきによるべし。
1028: 8 うけがたき人身をうけて、あひがたき本願にまうあひ、おこしがたき道心をおこして、はなれがたき輪廻の里をはなれ、むまれがたき浄土に往生せむことは、よろこびの中のよろこびなり。
1028:10 罪は十悪・五逆のものむまると信じて、少罪おもおかさじとおもふべし。罪人なほむまる、いはむや善人おや。
1028:11 行は一念・十念むなしからずと信じて、无間に修すべし。一念なほむまる、いかにいはむや多念おや。
1028:13 阿弥陀仏は、不取正覚の御ことば成就して現にかのくににましませば、さだめて命終には来迎したまはむずらむ。釈尊は、よきかなや、わがおしえにしたがひて、生死をはなれむと知見したまはむ。六方の諸仏は、よろこばしきかな、われらが証誠を信じて、不退の浄土に生ぜむとよろこびたまふらむ。
1029: 1 天をあふぎ地にふしてよろこぶべし。このたび弥陀の本願にまうあえる事を、行住坐臥にも報ずべし。かの仏の恩徳を、たのみてもなほたのむべきは乃至十念の御言、信じてもなほ信ずべきは必得往生の文なり。 黒谷聖人源空