四0647､ 示或女房法語

▲示しめ◗す或ある女にょう房ぼう◗に法ほう語ご第だい四し

念仏ねんぶつ行ぎょう者じゃのぞんじ候そうろうべきやうは､ 後世ごせおおそれ往おう生じょうおねがひて念仏ねんぶつすれば､ おはるとき､ かならずいかうせさせ給たまうよしをぞんじて､ 念仏ねんぶつ申もうすよりほかのこと候そうらはず｡

三心さんしんと申もうし候そうろうも､ ふさねて申もうすときは､ たゞ一ひとつの願心がんしんにて候そうろうなり｡ そのねがふこゝろの､ いつはらずかざらぬかたをば至し誠じょう心しんと申もうし候そうろう｡ このこゝろのまことにて念仏ねんぶつすれば､ 臨りん終じゅうにらいかうすといふことを､ 一念いちねんもうたがはぬを深心じんしんとは申もうし候そうろう｡ このうへわが身みもかの土どへむまれむとおもひ､ 行ぎょう業ごうおも往おう生じょうのためとむくるを廻え向こう心しんとは申もうし候そうろうなり｡

このゆへに､ ねがふこゝろいつはらずして､ げに往おう生じょうせんとおもひ候そうらへば､ おのづから三心さんしんはぐそくすることにて候そうろうなり｡

そもそも中ちゅう品ぼん下げ生しょうにらいかうの候そうらはぬことはあるまじければ､ とかれぬにては候そうらはず｡ 九く品ぼん往おう生じょうにおのおのみなあるべきことの､ りやくせられてなきことん候そうろうなり｡

ぜんだうの御おんこゝろは､ 三心さんしんも品々ほんぼんにわたりてあるべしと見みえて候そうろう｡ 品々ほんぼんごとにおほくのこと候そうらへとん､ 三心さんしんとらいかうとはかならずあるべきにて候そうろうなり｡

往おう生じょうおばねがはん行ぎょう者じゃは､ かならず三心さんしんをおこすべきにて候そうらへば､ 上じょう品ぼん上生じょうしょうにこれをときて､ よの0648品々ほんぼんおもこれになづらへてしるべしと見みえて候そうろう｡

又またわれら戒品かいぼんのふね・いかだもやぶれたれば､ 生しょう死じの大海たいかいおわたるべき縁えんも候そうらはず｡ 智恵ちえのひかりもくもりて､ 生しょう死じのやみをてらしがたければ､ 聖しょう道どうの得道とくどうにももれたるわれらがためにほどこし給たまう他た力りきと申もうし候そうろうは､ 第だい十じゅう九くのらいかうの願がんにて候そうらへば､ 文もんに見みへず候そうろうとん､ かならずらいかうはあるべきにて候そうろうなり｡

ゆめゆめ御おんうたがひ候そうろうべからず｡ あなかしこ､ あなかしこ｡

　　　　　　　　　　源空げんくう