1033◎▲蓮如上人御遺言
◎蓮如上人御遺言の旨をもて、 兄弟中仏法世間に毎事同心に京・田舎ともに可↢申 談↡の由、 既に御前にをひて御返事申 上候上者、 聊不↠可↠有↢違背↡候。 万一自今已後にをひて、 御内人等中事申 族有↠之者、 不↠依↢仁体↡見出 聞出 急 訴訟可↠申 候。 其時堅 可↠有↢御糺明↡候。 自今已後にをひては、 をのをの先非をあらためて、 老少男女ともに仏法にこゝろをいれて、 この時よりいよいよ安心決定せしめて、 あひたあがひに談合肝要の事。
可↢停止↡条々 事。
(1)
一 本尊御影等の事、 わたくしとして安置申べからず、 又は書申べからざる事。
(2)
一 過分 振舞、 過分 衣装等、 可↢停止↡事。
(3)
一 於↢御兄弟中↡、 京・田舎年始御礼、 停止之事。
(4)
一 御兄弟中得度之時、 御礼者御住持江計可↠申 候。 各々えは停止。 同女性出家之時も同前。
(5)
一 自↢御門徒中↡志御時之事、 代物次第に可↢用意↡事。
1034(6)
一 直参 門徒中互に引取次第、 堅 可↢停止↡事。
(7)
一 於↢御門徒↡、 中陰 仏事、 又は聊志之時、 連経停止之事。
(8)
一 付↢仏事↡為↠子月忌、 特 於↢ 幼少 者↡、 年忌不↠可↠然事。
(9)
一 御一家中 御門徒中へ挙状停止事。
(10)
一 自↢御門徒中↡、 御飯可↠申次第、 五菜二汁、 次は可↠為↢三菜↡事。
(11)
一 御留守事、 公私共に停止之事。
(12)
一 太刀・刀・金作、 停止之事。
(13)
一 万持道具以下過分に用意、 可↢停止↡事。
(14)
一 御兄弟中御京上之時、 御樽被↠参 候事、 公私共 可↢停止↡事。
(15)
一 御兄弟中御上洛之時、 私へ御宮気堅 停止之事。 同 於↢田舎↡も、 相互に其御心得可↠被↠成事。
(16)
一 就↢所縁之儀↡、 衣装・持具足等、 奔走不↠可↠然。 公私共に堅 可↢停止↡事。
(17)
一 髪置・帯直・眉金等之時、 別而祝イワヰを奔走不↠可↠然。 已後者ようしやあり、 可↢停止↡事、 いづれにゐなか1035は無益なり。
(18)
一 御産之時、 御太刀 御礼毎度者無益也。 但可↠有↢用捨↡歟。 然者脇々・田舎は堅 可↢停止↡事。
(19)
一 屋作、 自今已後者不↠可↢ 結構↡事。
(20)
一 一切銭勝負、 堅可↢停止↡事。
(21)
一 九月九日祝 秋あわせ停止之事。 依↠時 依↠人可↠有↢用意↡歟。 然共脇々・田舎者無益也。
(22)
一 すゝはきの祝停止之事。 是者脇々・田舎之事。
(23)
一 年始御祝者餅一種可↠然 事。 是も脇々・又は田舎之覚語也。
(24)
一 五月五日に帷以下時を定て用意不↠可↠然。 但依↠人少々可↠有↢用意↡歟。 総ては可↢停止↡事。
(25)
一 正月節之事、 丹後御申之事者無↢余儀↡、 其も如↢前々↡、 大儀奔走者無益歟。 暮々於↠私 近代号↢ 嘉例↡参会之儀、 返々不↠可↠然。 自↢此時↡有↢停止↡者也。 但不時之参会者不↠苦 歟。 然者三菜可↠然。 いづれに結構之儀にをひては、 自他可↢停止↡事。
(26)
一 五節供 朔日・明月・猪子等、 可↢停止↡事。 但1036依↠所 可↠有↢用捨↡、 総別者脇々・田舎は無益也。
(27)
一 御勘気之仁体、 以↢他人↡御侘言申事、 前々有↠之、 言語道断之次第也。 尤於↢一流之儀↡背↢御法↡者也。 所詮於↢已後↡者堅 可↢停止↡事。
(28)
一 座配之事、 坊主達之上に、 又若党之分と而座上をしむる事、 近年猥 次第也。 以後者堅可↢停止↡事。
(29)
一 他人を猶子にする事、 一家の疵なり。 自今已後者各成↢其心得↡、 公私共 如↠此 次第、 堅可↢停止↡事。
(30)
一 於↢一流 中↡為↢病人↡加持祈祷等、 不↠可↠有之次第也。 堅可↢停止↡事。
(31)
一 兄弟中京上之時、 御礼物 次第、 御住持へ百疋、 其外者五十疋・三十疋・二十疋、 此上者過分之儀者可↢停止↡事。 於↢田舎↡者、 強て五十疋・三十疋・二十疋之間可↠然。 殊に其も随↢ 分斉↡可↢振舞↡事。
(32)
一 女方不調 犯↢他妻↡事、 堅可↢停止↡事。
(33)
一 うへと而御免許なきことを、 私として猥 世間のごとく、 ほしゐまゝに、 いさゝかのちがひもあれば、 たやすく当↠ アタツテ時トキニ自妻を離別することこれあり。 あさましあさまし。 これしかしながら一向栄耀のあまり歟。 所詮向後にをいては、 かたく停止すべき事。
(34)
一 公方に召仕はれ候御女房衆、 殊は御乳人ををかし申す仁体これあり。 言語道断の狼藉なり。 剰 女房に申しうくる事、 一段の緩怠なり。 如↠此 の条々於↢已後↡者、 堅可↢停止↡事。
1037(35)
一 国々 坊主衆之就↢宿々へ御申之儀↡、 御出之時御飯之用意之次第者、 可↠為↢御内人計↡、 其外は悉 可↠有↢停止↡事。 就↠其 無菜之体可↠然 事。
(36)
一 於↢一流 中↡、 仏法を面とすべき事勿論也。 雖↠ 然 世間に順じて王法をまもる事は、 仏法を立てられんがためなり。 而に仏法をば次にして王法を本意と心得事、 当時是多し。 尤不↠可↠然 次第也。
(37)
一 坊主相違の時、 門徒として道場を退出させ、 剰 在所を追放し、 地頭領主へ付、 既に生涯に及べき造意、 これ又以 外の誤、 邪見の次第也。 堅可↢停止↡事。
(38)
一 一流法義にをひて、 一心決定の上には、 いかやうの悪事をも思のまゝに振舞とも不↠苦 由、 当時申沙汰する輩これ多し、 以 外の誤なり。 尤一宗の瑕瑾、 且は誹謗を招く基なり。 自今已後、 堅 此等の趣可↢停止↡事。
(39)
一 上へ就↧可↠被↢申入↡儀↥、 丹後 為↢御内人↡、 毎々兄弟中又は門徒衆自然之越度有↠之者、 不↣糺↢明 実否↡速 被↠入↢御耳↡事前々有↠之、 不↠可↠然。 各雖↠ 存、 于↠今所↢堪忍↡ 也。 自今已後は、 子細を両方共 被↢聞分↡、 涯分可↠有↢教訓↡。 尚以無↢承引↡者、 其時自他被↠致↢談合↡可↠有↢披露↡。 如↢前々↡聊爾之申事、 自↢此時↡堅可↠有↢停止↡者也。
1038(40)
一 蓮如上人御存生之時、 既毎事被↠得↢御意↡、 兄弟中申合事を為↠私及↢是非↡題目前々有↠之、 言語道断次第也。 如↠此之儀、 自他不快之基也。 所詮於↢已後↡者、 丹後度有御内人被↠成↢其心得↡、 就↢仏法世間↡、 聊爾壁訴訟申沙汰、 尤不↠可↠然。 雖↠然有↢存分之旨↡者、 急可↠被↢申上↡、 被↢聞召分↡京・田舎有↢御談合↡、 可↠有↢御批判↡候。 暮々雖↠為↢兄弟中一味↡、 御内人致↢中事↡者、 必於↢已後↡も可↠有↢不快↡由堅御懇に、 三月九日於↢八時↡慥に対↢兄弟中↡、 所↠有↢御遺言↡歴然也。 若万一於↣相↢背此旨↡者、 永尽↢冥加↡可↠蒙↢御罰↡者也。
右条々、 任↢御遺言之旨↡、 兄弟中有↢談合↡、 被↢申定↡上者、 於↢末代子々孫々↡不↠可↠有↢違背↡。 若此趣無↢承引↡之仁体有↠之者、 幾重自他可↠預↢御指南↡所、 憑存也。 就↠其、 丹後一類御内人、 同於↢御門徒中↡、 可↣相↢守此旨↡者也。 仍所↠定如↠件。
*明応八年 己未 四月廿五日
実如
蓮綱
蓮誓
蓮淳
蓮悟
蓮応
底本は龍谷大学蔵万治元年書写本。