たね

  すっごい数の草だ!

  庭が大変なことになってるよ。

  この前きれいにしたばっかりなのに。

梅雨の間はこんなものだ。

やれやれだけど、

きれいにしとこうと思えばまた一つひとつ引くしかない。

  この様子だと、

  今きれいにしてもまたすぐ戻っちゃいそうだよ。

ここは去年この時期に忙しくて手がまわらず、

草が実をつけてしまって、

たねがいっぱい落ちた所なんだよ。

だから、今あるたねがみんな芽を出して、

花を咲かせてしまう前に引いてのけられたら、

来年は随分楽になるはずだ。

投げ出してしまったら元に戻る。

  そうかぁ。やり続けるか、ほっぽり出すか……。

見てごらん、あそこにはこの草はほとんどないでしょ。

ここも基本的には手入れのできているところだから、

案外大したことはない。

  一年の辛抱か。

ここはね。

それに、去年落ちたたねが今年みんな芽を出すわけじゃない。

田んぼのひえなんか、

弥生時代のたねも時がきたら芽を出すというよ。

  それじゃぁ、終わらないじゃない!

そのとおり。

わたしたちもどれだけのたねを抱えているのかな。

今たまたま芽を出していないだけで、

機が熟したら何が芽を出してくるかわからない。

それを草が教えてくれているんだよ。