むかで (6月18日)
庭木のつつじの下に首をつっこんで手入れをしていたら、首筋がもぞもぞし始めました。
もしやと思ってはらってみると、案の定むかでです。少し前まではむかでを見ると大騒動をしていましたが、この頃では慣れて様子がわかるようになり、さほどのことはありません。
むかでは、見かけによらず平和主義者です。何かがあったら、とにかく逃げようとします。どうにも行き詰まってどうしようもなくなってから、やむを得ず噛みつくことを考え始めるようで、触ったらいきなり刺すということはあり得ません。昔、地下足袋の中にいるのに気がつかずそのままはいて刺されたときも、いよいよ刺されたのはゆっくりはき終って――地下足袋をはくには時間がかかります――しかもかなりの距離を歩いた後でした。おそらく、そっとつまめば素手で持って歩くこともできるでしょう。
むかでにせよ蜂にせよ、素性は実はおとなしい。情け容赦なく凶暴なのは死です。こればかりは、おとなしく逃げてくれることは決してなく、いつでも噛みつこうと待ちかまえています。
むかでに大騒ぎをする暇に、生死の問題の解決こそ、急がねばなりません。